今日は、雑感を書きます。
この頃改めて無料塾について考えるのですが、三つの「分かち合い(シェア)」によって成り立っているのではないかと思うのです。
一つ目は「学力、知識のシェア」
二つ目は「富のシェア」
三つ目は「貧しさのシェア」
です。

「学力、知識のシェア」とは、今まで獲得した学力、知識を後輩にシェアしていくことです。
インターネット上の議論を見ると、「低学力はその子のやる気がないのが原因。自己責任だ!」という心ない意見が散見されます。しかしどうでしょうか?両親が離婚問題で揉めている横で、集中して勉強できるでしょうか?貧しくてこれから家族がどうなるのか心配する中で、成績を向上させろと言うのは酷な気がします。
私自身も大学受験の1ヶ月前、受験勉強で悪戦苦闘している横で、両親が「我が家には今800円しかない。次の給料は20日後。」と言った声が聞こえた途端にどうしたら良いかわからずに、家から飛び出していました。1時間後に帰って来たのですが、どこをどう走ったのか全く思い出せないのです。
貧困から来る環境に対し、先に学力を獲得した先輩が「手助けしてあげよう!!」と腕まくりをして優しく寄り添い、励ましながら教える姿。こういう塾を目指しています。
講師が学力を獲得するまでにはそのご両親が相当に投資して下さったはずです。その投資を「未来ある子ども達」に無償で提供して欲しいのです。私も母方の祖父母に大学の学費を出してもらいました。その学力を困窮家庭の子ども達と「分かち合い」たいと思っているのです。

「富のシェア」は、文字通り金銭的な寄付をして頂くことです。
「自分で稼いだんだから自分のことに全て使って何が悪い!!」という方もおられますが、そのお金はどこからきたのでしょうか?例えば携帯電話会社に勤務されていれば、困窮家庭が使っている携帯電話の料金から利益が出ているはずです。ですから、困窮家庭と無縁であるとは言い切れないはずです。母子家庭が必死に節約して暮らしている生活費の中から利益を出しているのですから、「じゃあ困っている子ども達のために少しでも使ってもらおう」と少額でもいいので寄付をして頂きたいのです。

「貧しさのシェア」とは、誤解を招く表現なので、長く説明しなければなりません。
私の例で言います。正直に言うと、映像制作の仕事を辞めて収入が初年度は5分の1程に激減しました。現在は4つの仕事を掛け持ちしながらやっています。それは、つばめ塾に影響のないように働いているからです。なるべく平日夜と土日はつばめ塾のために時間をあけたい。そうすると細かい仕事を集めるしかありません。
そこまでする必要はないのかもしれません。ただ仮に生徒面接を「木曜夜19時からだけ」など、特定の時間に限定してしまうと、面接に来れない親子がいます。つばめ塾の面接に来る為だけに仕事の休みを取らなければならないかもしれません。それでは本末転倒です。支援する側の都合で支援される側の収入が減るようなことはなるべく避けなければなりません。ですので、私の予定は、入塾希望者、講師希望者、無料塾を開きたい人のために最大限空けています。
「つばめ塾に参加しなければもう少し稼げる。でも多少収入が下がっても、子ども達のために時間を作る。」これが「貧しさのシェア」です。ここまで大げさでなくても、講師全員に言えることです。つばめ塾に来ないで、休めばいいし、自分の将来の資格の為の勉強をすればいいはずなんです。大学生ならバイトして稼ぎまくればいいはずなんです。そこを子ども達のためにボランティアする。これが大事だと思うのです。
ご家庭の事情で大変苦労して進学して自分で学費を払っている大学生講師がいます。その人を姿を見ると、「つばめ塾に来ないでバイトすればお金が儲かるのに!!」と思うのですが、「自分も苦労しているから、後輩達の役に立ちたい」と一生懸命に来てくれます。本当に頭の下がる思いです。
過去にこんな講師もいました。母子家庭の出身の方でしたが、「無料塾の講師をやっていると大学で言うと、有料塾でやれば儲かるじゃん!とか、そんなことやっても世の中変わんねえよ!とか友人に言われるんですけど、そうは思いません。無料塾で少しでも世の中変わると信じているんで。」と言ってくれました。聞いていて涙が出ました。

ここまで書くと、こんなにしなければ「無料塾」はできないのか!!と誤解されますが、そうではありません。
私が「中途半端」にやるのが嫌いなんです。
貧しい家の子として生まれた私がこうしてボランティア出来る事が本当に嬉しくて有り難くて、喜んでやっているだけなんです。
今まで勉強ができなくて困っていた生徒がわかるようになって一生懸命勉強する横顔を見たら、このボランティアはやめられません。つばめ塾の存在によって生徒の未来が少しでも明るくなるかと思うと、毎日ワクワクします。今日も第一教室では生徒が二人、一生懸命に勉強していました。

今まで多くの方が、三つの「分かち合い」をして下さり、つばめ塾は運営することができたのです。本当に有り難く思っています。この分かち合いを大切にしながら、これからも困窮家庭の子ども達のために全力を注ぎたいと思っております。

事務局長 小宮位之