今日は雑感を書きます。

つばめ塾では、奨学金制度を5つ持っています。
その中で、「教科書奨学金」というものがあり、高校や大学に入学するときに「2万円」支給するものです。

今年大学に入った、うちの卒業生のなかで、希望者に渡しています。その面談の際に、こういう子がいました。

「うちは母子家庭で育ちました。私たちきょうだいを母がとても苦労して育ててくれました。とても尊敬しています。私は高校の教師を目指していますが、似たような境遇の子がきっといると思います。そういう子たちの力になってあげたい。」
こんな話をしてくれました。聞いたときに、心の底から感動しました。

私が大好きな言葉に、「家貧しくして孝子顕る」があります。確かに、親孝行な子が育ったらいいとは思いますが、一番の親孝行は「世の中の役に立つ人材に育つ」ことではないでしょうか?私自身がこうありたいと、大学生のころから思っていました。単に親を温泉旅行に連れて行ってあげるとかでなく、世の中に役に立つことこそが、両親が一番喜んでくれるのではないかと思っていたのです。
父は収入はとても少ない人でしたが、少年野球のコーチを25年も務めて、子どもたちのために尽力した人でした。別に誰から表彰されることもなく、もちろんそんなことを気にすることもなく、「野球をとおしての子どもの成長」だけをひたすら考えてグランドに立ち続けた人でした。父は字が書けなかったので、メモ用紙を常に持っていて、いい方法が思いついたらすぐに母に書いてもらっていました。
父はもう亡くなりましたが、天国から「人からの評価など気にせず、ひたすら子どもたちのために尽くせばいいんだぞ!!」とバカでかい声で言ってくれているような気がするのです。

先ほどの大学生は、本当に親孝行だと思います。教師という職業をとおして、「後輩の力になってあげたい」いう気持ちを持って学んでいる。こんな嬉しいことはありません。

また、教師を目指している高校生の子の面談も先日しました。
「中学の時に、進路への取り組みに嫌気がさしたとき、本当にそれでいいのか、と言ってくれた中学の先生に救われました。高校では、悩んで高校を辞めてしまう友人がいました。教師になったら、そういう子たちの力になりたい。」と言っていました。これも感動しました。
確かにまだ高校生、未熟です。これから困難もあるでしょう。でも「本立ちて、道生ず。」と論語にあります。教師になりたいという動機の「根本」が定まれば、必ず道は開けてきます。

つばめ塾も、設立した日に「経済的に苦しい家庭には、お金が必要だ。1000円でも2000円でもいい。返さなくていいお金が必要だ。いつか奨学金を作りたい」と誓いましたが、たかだか一介のサラリーマンが1人で始めた塾に、誰がお金など出してくれるでしょう。夢物語だと思っていました。しかし始めて10年後の昨年度には1年間で、およそ350万円の奨学金を70名ほどの塾生、卒業生に渡すことができました。これが「本立ちて道生ず」だと思っているのです。

父が「野球を通して良い子どもたちを育てたい」とひたすら願っていたように、私も毎日「どうしたら経済的に苦しい家庭の子どもたちがより良い人生を送ることができるか」だけを考えています。むしろそれ以外考えることなど何もありません。何を見ても聞いても、最終的にはつばめ塾の子たちの将来にどうつなげるかしか考えていないです。

全国の寄付者の皆様、ご寄付頂いた資金は、多くの塾生・卒業生にわたって、活かされています。本当にありがとうございます。
そしてそれを善導しているのが多くの「ボランティア講師」です。単にお金を渡しているわけではありません。ボランティア講師の後姿があってこその奨学金です。講師のボランティア精神を隣でいつも見ていた生徒が、その尊さを感じて卒業するのです。

物価が上がり、とはいっても賃金が上がるわけでもなく、治安が悪くなり、暗い話題が先行する世の中です。でも、面談した子たちの言葉に、大きな力と勇気をもらっています。こういう力がなかったら、ここまで継続できていなかったと思います。
そして、そんなくらい暗い世の中でも、私たちがやることは決まっています。つばめ塾の子たちに学習支援をする、卒業生を応援することです。
さあ明日からまた、張り切っていきましょう(^^♪

事務局長 小宮位之