2012年9月1日、在籍予定生徒1名。講師、私1名。
9月9日、記念すべき一回目の授業。講師が私、生徒が中学2年生男子1名。

こうして始まった「つばめ塾」は今日で10年が経ちました。

塾を作った日、こんな10年後を想像することはできませんでした。
私自身が正社員を辞めて、非正規雇用になりながら、塾を運営していること。
卒業生が300人近くにもなったこと。ボランティア講師がこんなにも多くいること。
卒業生がまた教えに戻ってきてくれていること。
寄付者が多くの寄付をして下さり、支援者が多くの物品を送って下さること。
NPO法人となり、さらには認定NPO法人にまでなったこと。
生徒に奨学金を出すことができていること。

タイムマシーンで「10年後はこんなになっているよ!!」と10年前の私に教えてあげたい気もしますが、それは止めておきましょう。もし今日のつばめ塾を知っていたら、あんなに真剣には取り組まなかったことでしょう。
8月27日に一人目の生徒から入塾希望のメールが来て、ガッツポーズをして喜んだこと。9月初旬に初めてのボランティア講師が応募して来てくれて「無料塾への思いが他の人に届いた!!」と布団から飛び起きて喜んだこと。2年間、全く寄付が無くて、30万円以上持ち出していた時、初めて寄付金が現金書留で届いて、心の底から感謝したこと。
無料塾がこの世の中にほとんどなかった10年前、完全に手探り状態で毎日真剣に塾を運営したこと。もし、10年後を知っていたら、もっと怠惰になっていたはずです。

「無料塾」なんていうボランティアが大きくなるのか、成り立つのか、わからなかった、設立半年後。でも、「世の中に、経済的に苦しいご家庭の子どもたちが無料で学べる場所がなくてはならない」と真剣に思って、運営に全てを注ぐために正社員を辞めて、完全無職になりました。その状態で、子どもの手を引いて、長男の小学校の入学式に、次男の幼稚園の入園式に出たこと。あの時の「背水の陣」「虎穴に入らずんば虎子を得ず」のギリギリの線で動いていたあの頃。家を支えるためにありとあらゆるアルバイトをしました。これで無料塾への覚悟が決まりました。「ここまでしてやっているんだから、どんなことが起きても、真剣に向き合っていこう。」これから無料塾を始める方には、仕事を辞めてまでやることは、全くお勧めしません(笑)。しかし、私の無料塾人生の中では、必要不可欠な試練であっって、この時期を過ごしたことが私の宝物だと思っています。

生徒が1人もいないところから始めたからこそ、生徒が来てくれる嬉しさがわかりました。自分が「社会」しか教えられないからこそ、ボランティア講師が英語や数学を一生懸命教えてくれることに感謝ができました。2年間寄付がなかったからこそ、寄付者・支援者のみなさまの寄付金、寄付品がどれだけ貴重なものかを感じることができました。
そして、10年前には想像もできないほど、無料塾が増えました。つばめ塾の弟子も全国に沢山います。

10年続けてこれたことに、万感の思いが溢れすぎて、これ以上書けませんが、最後に改めて考えることがあります。それは、つばめ塾のミッションである「経済的に苦しいご家庭に希望を届ける」ことができているか、もう一度点検してみたいと思うのです。つばめ塾は「全ての資源(資金・ボランティア活動)を経済的に苦しいご家庭の為に使う」ことを目指している団体です。

進路に向けて一生懸命に勉強してきた塾生・卒業生の真剣な思い、1円の得にもならないことの為に、時間と交通費を使って毎週教えに来てくれるボランティア講師の熱い思い、見たことのない塾生の為に、寄付金を送金してくれる寄付者のみなさま、物資を段ボール一杯送ってくれる支援者のみなさまの温かい思い、その全てを本当に有難く思い、全ての資源が子どもたちの為になっているかを常に考えて取り組んでいきたいと思います。

これからもつばめ塾が経済的に苦しいご家庭の子どもたちを応援できる団体であり続けられるよう、
卒業生のみなさんは、将来に向かって頑張ってください!!もしまわりに困っている人がいたら持ち前の優しさを分けてあげてください。
ボランティア講師のみなさんは、これからもどうぞ、塾のためではなく、塾生のために尽力をお願いします。
寄付者・支援者のみなさまには、温かいお気持ちの応援をお願い致します。私が必ず、塾生・卒業生にそのお気持ちをお届けいたします。

最後に、つばめ塾の運営に人生を掛けている私を、理解してくれ、時間さえあれば塾に行こうとする私を、快く送り出してくれている妻と子どもたちに深く感謝します。

設立10周年記念日に。

認定NPO法人八王子つばめ塾 理事長兼事務局長 小宮位之