今日は、事務局長の雑感を書きます。
昨日から、つばめ塾の新高校1年生の「高校生奨学金」の募集が始まり、早速申し込みがありました。
月額3000円支給の奨学金です。
「何に使いたいですか?」「経済的に大変なことはないですか?」と記入してもらうのですが、こんな書き込みがありました。

「部活動の時の飲み物を買いたい」「高校まで遠いので、定期代に充てたい」「部活動の帰りに、友達と買い食いがしてみたい」「軽音楽部に入って自分のギターを買わなければならないんだけど、母に負担をかけてしまうのが心苦しいので、購入に充てたい」「週6日部活をしているとバイトする時間もないし、週1日で雇ってもらえるバイト先も見つからない」「自分のために使えるお金が全くない。文房具を買いたい」「親から全く小遣いがないので、助かります」「友達とボーリングやカラオケに行ってみたい」

こんな記入がありました。読んだ瞬間に、大粒の涙が溢れてきました。高校生のみんなの心からの声が心底わかるからです。経済的に苦しい状態になったことがない方には、ちょっと理解できないかもしれません。「奨学金もらって、買い食いかよ」とか、「文房具くらい、、、」など意見はいろいろあるかと思いますが、実はこういうことが奨学金の意義なんです。

私が高校生の時は自転車で通学していました。そして財布の中には、毎日「1100円」だけが入っていました。1000円は自転車が通学中にパンクした時に直すためのお金。使ってはいけないお金です。残りの100円は、高校の購買部で「スポルトップ」というスポーツ飲料を買うためのお金です。(当時、水筒を学校に持っていくという概念は、世の中全体でほとんどなく、誰も持ってきていませんでした。なので、昼食時に飲むためのものです。)この100円だけは母から毎日もらっていました。これが小遣いです。
だから、行くところと言えば、ブックオフの百円コーナー。まだ4店舗しかない時から通っていました。古本や中古CDの百円コーナーしか見るところがなく、それ以外に行くことはできませんでした。私が持っている小遣いと言えば、冬休みに郵便局の年賀状配達のアルバイトをして、7万円ほどの稼ぎで1年間暮らすのです。部活の費用や電車代を出したら、1年で使い切ってしまいます。しかしそれも、3年に入って大学受験に向けて進研ゼミを申し込んだら、冬休みに75000円稼いだバイト代のうち、72000円がなくなってしまい、郵便局で払った後に、「あと9か月余りをどうやって暮らしたらいいんだ」と頭を抱えたことをよく覚えています。

私は中学の頃から、「我が家以外から入ってくるお金でなければ意味はない」と思って、親からの小遣いをなるべくもらわないようにしていました。親から多く小遣いをもらったところで、親がまずます貧乏になるだけだからです。なので、しょっちゅう祖父の家に遊びに行っていました。駅の公衆電話から電話をかけてお酒がいるかを聞き、コンビニでワンカップの日本酒を買って持って行くと気前よく1000円くれたので、800円の儲けになるからです。そんな中高生時代でしたから、今回の高校生の申し込みの内容は、痛いほどわかります。

奨学金実施にあたって、もう一つ大切にしていることは、「返済しなくて良いお金の重要性」です。私は大学4年間で255万円を借り、39歳まで毎月12533円ずつ返済していました。だから、返さなくていいお金の有難さは身に染みてわかっています。なので、「自分の親以外からの、返さなくていいお金を、500円でも、1000円でも!!」というのがスローガンになっています。

何回も同じことを書きますが、つばめ塾創設の日に「いつか将来、500円でも1000円でもいい。塾生・卒業生に現金を渡したい」と誓いました。しかし一介のサラリーマンにできることではありませんでした。けれども、10年経った現在、5つの奨学金を合わせて年間300万円近くの奨学金をわたすことができています。寄付者、支援者のみなさまと一緒に、子どもたちを応援できること、本当に誇りに思っています。
確かに月額3000円は十分な額ではありません。しかし普通で考えたら、親戚でもない、赤の他人から毎月3000円もらえることなどありません。そこを実現できているのがつばめ塾の奨学金です。

全国の寄付者、支援者のみなさま、本当にありがとうございます。ご寄付は、高校生の「何気ない日常」を支えています。私も、奨学金の責任者として、高校生と関わりながら、支給を進めていきます。

認定NPO法人八王子つばめ塾 理事長兼事務局長 小宮位之