8月31日に公表された学力テストの結果ですが、その記事に八王子つばめ塾としてコメントが出ていました。写真は、西日本新聞さまの一部です。この記事は共同通信さまの取材に答えたものです。
さて、「コロナ禍と学力」について、私は2つの視点をもっています。
一つは、経済的に苦しいご家庭とそうでないご家庭の「学力の格差」は少なからず広がっているということ。
あともう一つは、学力の格差より、「体験、経験」の格差の方が心配ということです。
まず学力の格差ですが、
①わからない問題があれば、保護者に聞くのが一番早いが、保護者自身が質問に教えられる力量があるか。
②経済的に苦しければ、有料塾には行けず、学校の先生に聞いたり無料学習支援に頼るしかないが、有料塾は開いているけれども、学校は休校となり、無料塾は公民館などを使っているため、開催が減少していることにより、格差が広がる。
③自宅でのオンライン学習やプリント学習などは、保護者が家に在宅できるかが大きな差をもたらすと思われる。経済的に苦しいご家庭の保護者は、在宅勤務が難しく、現場に出ないと仕事にならない方が、世の中の「平均値」より高い。よって、朝仕事に出かけてから、子どもだけ家にいる場合が多く、学習に身が入らないケースが見られる。保護者が直接教えなくても、「ほらプリントやりなさい。」「オンラインでちゃんと授業を受けなさい。」と促す存在が近くにいるか、全くいないかの差は大きい。
つばめ塾では、以上のように分析しています。ですので、つばめ塾ではなんとか対面の授業を行うべく、会場の確保に東奔西走してきました。
次に体験、経験の格差ですが、この方が将来に大きな影響をもたらすと思います。
①高校に進学する際のモチベーションに関しては、「将来、この学問を勉強したいから、〇〇高校に行きたい」という生徒は、うちの塾生にはほとんどいないです。では何のために高校に行くのかと言えば、「高卒」の資格を取りに行くのです。保護者から、「最低でも高卒を」とはほぼすべての家庭で言われており、「将来働くときのために」という文脈で捉えられています。もちろん、大学、専門学校へなどの進学を初めから視野に入れる子もいますが、多くはありません。それは高校に行ってから決めたいという子が大半です。そう考えると、「実際に見る、体験する」ということがモチベーションアップに繋がるので、コロナで高校見学や部活体験が制限されると、つばめ塾の塾生には不利な状況が生まれます。
②中学生の「職業体験」ができないのが非常に痛いです。中学校の職業体験は、「就労意欲」を高めるのに最適なコンテンツです。つばめ塾に塾生は、いきなり起業したり、大学院を出て研究職に就く可能性が一般家庭よりとても低いです。それは家庭の資産状況に大きく左右されるからです。そうすると、まずは給料をもらう「サラリーマン・労働者」として、しっかりお金を稼ぐことが一番重要なことになります。そのための職業体験は本来なら、とても重要なのですが、それがこの2年間ほぼ中止になったのは、少なからず影響が出ます。ちなみに、私が中学生の時は職業体験がなかったので、この取り組みは羨ましいです。もし行くとしたら、八百屋さんに行きたいですね。自分の声がどこまでお客さんに通用するか、チャレンジしたいです(^^♪
③次に修学旅行(社会科見学を含む)の中止や行先変更がとても痛いです。東京の子は、ほとんどの生徒が京都、奈良方面に行って、金閣寺や清水寺を見て、奈良で大仏を見て、奈良公園で鹿に鹿せんべいをあげるわけです。もちろん、コロナでみんなで行くという「思い出」がないのはさみしいですが、それよりも、例えば金閣寺を見ない方が損失が大きいと思います。東京で中学を過ごした他の世代なら、「ああ金閣寺ね。」と知っていることを今の子たちは知らない。これは普通なら得るべき体験の喪失です。お金がある家庭であれば、「高校に入ったら、お父さんお母さんと一緒に行こうか」となりますが、経済的に苦しい家庭は絶対にそれはできません。親がついていくということは、費用が2倍3倍かかるということです。修学旅行なら、本人一人分の費用で済みます。夏合宿の際に「生まれてからいくつの県に旅行、帰省したことがあるか」というアンケートを毎年取っていますが、平均すると、「3県」です。たぶん、関東近郊の県が多いと推察されます。ですから、家族で旅行する余裕はあまりありません。修学旅行で得られる京都、奈良の知見がすっぽり落ちるのは、とても残念なことです。
最後に、「じゃあ、どうすれば良いのよ!!つばめ塾に代替策あるんかい??」と言われそうですが、つばめ塾にできる代替策はありません。しかし、課題があることは認識してもらいたいと思っています。学力テストの結果、「休校でもそこまで影響なかったね。良かった良かった。」となるのは違うなと思って投稿しました。
理事長 小宮位之