このたび八王子つばめ塾は、現在運用している奨学金の名称を「原島記念学生奨学金」と改称することを決定いたしました。

一昨年の冬に、私の義父母の友人である「原島さま」が逝去され、その遺産から1000万円を超える寄付が昨年の夏にありました。その御遺志は、日々の塾の運営費でなく、学生に対する奨学金であると受け止め、お名前を冠した奨学金とすることといたしました。現在の奨学金額から勘案して、2022年4月から7か年にわたって、この名称で運営していきます。

7年ほど前に私は、妻の実家で開かれた懇親会で、原島さまと知り合いました。私がつばめ塾を運営していることに「いいことをしていますね。」と賛意を示して下さいました。原島さまは八王子駅前で自転車整理の仕事をされてましたので、私も頻繁に駅前で会う機会があり、そのたびにお互いに笑顔で挨拶をしていました。一昨年の夏にご体調を崩された後、共通の知人の方から「原島さんが遺産の一部はつばめ塾に寄付したいと言ってたよ。」とお聞きしました。まさかここまで早く逝去されるとは思いもよらず、遠い未来の話だと思っていて、お見舞いに行かなかったことが悔やまれます、、、

義母の知人に話を聞いたところ、原島さまは、幼い頃から病弱な方で、小学校、中学校の義務教育の中で、3分の2ほどは通学していなかったようです。高校に進学せず、中卒で働き、様々なお仕事に就きながら、苦労されたようです。だから八王子つばめ塾に共感されたのではないかとのことでした。そして結婚をされず、妹さんも小さい頃亡くされ、ご両親を看取られた後は、市内のご自宅を売却し、老人ホームに入って、癌の治療などを10年以上されていたようです。そして財産を相続すべき方が誰もおらず、遺産のおよそ3分の1をつばめ塾に寄付するとの遺言書を残してくださいました。

どうして、お名前を冠した奨学金にするかというと、原島さまの生き方が、つばめ塾が理想とする「生き方」に近いこと。この一言に尽きます。つばめ塾の理念は、「自分さえ良ければいい、お金さえあればいいという生き方を捨てて、自分もいつか人の役に立つ生き方をしたいと願う青少年を育成する」というものです。

原島さまは、「中身の伴わない無駄な学歴」「派手にお金を使う生き方」「自分のためだけにお金を使う」という生き方とは「正反対」の方でした。もちろん、自分で稼いだお金をどのように使おうが構いませんが、つばめ塾の奨学生に期待する姿は違います。つばめ塾が奨学生に期待するのは、「流されて、怠惰な気持で進学するのではなく、学びたいことを学ぶために進学する」「コツコツ働き、質実剛健な生き方をする」「自分の生活に必死の状態から抜け出すことができたなら、余剰の時間・能力や資産を少しでもいいから社会のために還元する。」こういう生き方をしてほしいと思っています。これは、強制ではなく、こういう生き方が幸せになる近道なんだという私の信念からです。「学ぶ」「働く」「ボランティアをする」これこそが、つばめ塾の示す道だと堅く信じて今日まで運営して参りました。もちろん、私自身も目指してはいますが、完璧に実践できているわけではないです。しかし、原島さまのストーリーを塾生、卒業生にわかりやすく明示し、「こういう方がみんなを応援してくれているんだよ」というメッセージは打ち出したいと思います。

最後に、寄付に関してつばめ塾の見解を申し上げます。
この9年間の、みなさまからの寄付のおかげさまで、今日明日潰れる団体からは脱却しました。しかし、年間使用額の30%は、奨学金として、塾生や卒業生に「現金」として渡っております。しかもつばめ塾は国、東京都、八王子市などの行政からは一切お金を受け取っておりません。ですので、現金でのご寄付は、今後もお願い申し上げる次第です。
「無料学習支援」「食料品支援」「奨学金支援」の3つを柱として、経済的に苦しいご家庭の支援を今後も積極的にして参ります。

改めて、原島さまのご冥福をお祈りするとともに、今後の努力をお誓いしてこの発表を終わらせて頂きます。

認定NPO法人八王子つばめ塾 理事長 小宮位之