最近、「無料塾」のあり方について改めて考える機会が増えたので、「八王子つばめ塾はどう考えているのか?」という考えを少しまとめてみました。
「無料塾について」
1、個人が始める自由と多様性を大事に
本来、無料塾は、地域の子ども達を応援したいという個人の思いが集まってできるものと考えます。「おう、英語が出来ないんだって?じゃあ土曜日の午後に○○町三丁目会館に来てごらんよ。英語ならおばさんに任せておきな!!」という地域のおじさん、おばさん、おじいさん、おばあさん、大学生のお兄さん、お姉さんらによる、規模の小さな勉強教室から始まるのが理想です。
無料塾には何かの基準があるわけではありません。子ども達を応援したいという情熱が必要なだけです。
無料塾のスタイルには色んな形があっていいはずです。心地よい居場所的な塾があってもいいし、ガリガリ勉強する塾があってもいいはずです。色んな経歴、生い立ち、現状の講師が集まる「多様性」が色んな子どもを受け入れる素地になると思っています。
2、税金の投入を最小限に
行政とボランティア団体のやるべきことと、得意なことは違います。富の再配分をするのが行政の仕事ですから、経済的に苦しい家庭の「収入」をどうしていくのか。これは無料塾が逆立ちしたってどうこうできるものではありません。そこを政府や行政は真剣に考えて実行してもらいたい。
ただし、行政が行う事業には、税金が投入されるわけですから、ある部分で一線を引かなければなりません。しかしながら「経済的に苦しい」という状態は、簡単に線を引けるものではなく、個々のケースによるところが大きい。そこで民間ボランティア団体の登場です。税金の投入を公民館の使用料免除等の「最小限」に抑えることで、幅広い対象者を持つ無料学習支援を目指しています。
3、無料学習支援を「お金のかかるもの」から「善意を集めたもの」に
では、公的な資金の投入なくして、どうやって運営するのか。それは、市民一人ひとりの善意の集まりにしたいと考えています。「勉強が得意な人」は生徒に教えればいいし、「土地や建物を持っている人」は、それを無料塾に使ってもらえばいいし、「事務的な能力がある人」は、事務作業の時間を提供すればいいし、「お金を持っている人」はお金を寄付してもらえばいいと思います。自分のできること、得意なことを子ども達のために使う。こういうことが上手く循環すれば、本当の「市民社会」になると考えています。
4、無料塾も選べる時代に
駅前の有料塾をいろんなタイプから選ぶ事ができるように、無料塾にも色んなタイプがあっていいと思います。「ガッツリ教えてくれる無料塾」、「行くとなごむ居場所型無料塾」、「夕食をみんなで食べられる無料塾」など、自分の居住地域にいろんな無料塾があって、距離やタイプによって、行きたい所に通える、そんな社会になれば、経済的に苦しくなっても「教育だけは心配ない」という安心感が得られます。
5、個人が始める無料塾を広めよう
以上4番までの持論を展開すると必ず、「それは理想だけど、無料塾が地元に無い場合はどうするんだ」という意見が出てきます。そこで、八王子つばめ塾では、個人や数人の同志が集まって無料塾を開くことができるよう、ノウハウを全て公開しています。お越し頂ければ、「見学」も「無料塾の作り方のレクチャー」も無料で実施しています。今までつばめ塾が設立を応援させてもらった無料塾は、大体3ヶ月以内にスタートしています。大きな団体がドーンとあるより、全国に小さい無料塾が増えて、きめ細かく子ども達を応援することがつばめ塾としての理想です。この3年半で、北海道から沖縄まで、多くの方の「無料塾を開きたい」という相談に乗って参りました。日本のどこに生まれても、個人の善意から始まる「無料塾」が子ども達の学習のサポートをしていくことを目標に、開塾をサポートしています。
以上が今まで色んな方に話してきた「無料塾」への思いです。
つばめ塾がここまで活動をできているのも、ボランティア講師、支援者のみなさまのお陰さまです。改めて感謝する次第です。
他の無料塾に強制するつもりはありません。ただ単に「こういう方向性で八王子つばめ塾は活動を行いたい」というものをまとめて表したものです。
特定非営利活動法人八王子つばめ塾理事長 小宮位之