先日、私の著書 「無料塾」という生き方 教えているのは、希望 を12月に出版するという話はしましたが、今日は、イラストを描いてくださった羽賀翔一先生のことを書きたいと思います。
出版社の編集者さんに「表紙と挿絵は、羽賀翔一先生にお願いしましょう」と、言われて驚きました。漫画版の「君たちはどう生きるか」の作者で、有名な方だったからです。(宮崎駿さんのアニメとは全くの別物です。)
私のような無名の人間が書いた本の表紙など受けてくれるだろうかと思いましたが、「第一稿」をお読み頂いて、快諾頂けました。
そして、塾や私の思い出の写真を何枚かお送りして、イメージを膨らませてもらいましたが、つばめ塾の教室を見学頂けることになりました。6時半に来てくださり、私の話を聞いて、7時から見学。お忙しい方なのですぐに帰るだろうなと思っていたところ、色紙を取り出して、「生徒さんの似顔絵を描いて、プレゼントしましょうか?」と言ってくださいました。めちゃくちゃ驚きました。教室に来て勉強している子たちを、教室後方に席を用意して、1人5分ほどでササっと描いてくれました。あまりにも生徒本人に似ているので、その似顔絵はここには載せられません!!加えて感動したのが、羽賀先生が、生徒本人の優しさや良いところを最大限、絵に反映してくれたことでした。人間誰しも、いい面悪い面がありますが、いい面を最大限引き出してくれることって、簡単なことではないし、それは羽賀先生が常日頃、「人の良い面を見ようとしていること」だと、私も学ばせてもらいました。その後、時間があったので、ボランティア講師も描いて下さり、私と、編集者も描いてくれるという嬉しいことになりました。
私の似顔絵が、似てることはもちろん感激したのですが、私が胸にいつも入れている「ボールペン」も描いてくれたことと、宛名を「小宮先生へと書いていいですか?」と聞いて下さったことに感激しました。
ボールペンは、実はかなり意識してまして。今はつばめ塾の事務局長・理事長になってしまったので、毎回の授業で生徒に教えることはほぼ無くなってしまいました。しかし、意識の中では「つばめ塾の理事長は、あくまで講師でなければならない。いつでも生徒に勉強を教えることができる態勢だけは取っていなければならない」という信条があり、塾に行くときは必ず胸ポケットに入れていますし、逆に言うと、胸ポケットのない服は買わないようにしているんです。(いつでも教えられるように、裏紙も必ずカバンに入れています。)何気なく、似顔絵の最後にサッとペンも描いてくれました。
また、宛名は、生徒には、「描いてほしい名前を書いてください。」と言って、ローマ字やひらがな、漢字を選ぶんですが、私だけは、「小宮先生へと書いてもいいですか?」と言われて、ちょっと驚きました。羽賀先生が人をリスペクトすることの大切さを教えて下さっているように感じました。私も、生徒、講師をリスペクトしていこうと思いました。
こうして、教室見学をしてくださった羽賀先生が、表紙を描いてくださいました。
カラー版の表紙が出来上がり、一目見てとても気に入りました。この少年が、私の14歳のころに見えたからです。顔の造作は似てませんが、眼差しが似ています。社会に不満があり、「なんかやってやろう」という気持ちを秘めつつも、まだ何をしようかはわからないという眼差しが、とても気に入りました。
ただ、一方で「少し暗いな、、、」と感じました。
私は、これをどう受け止めたらいいだろうかと、塾の帰り道にじっくり考えてみました。羽賀先生は、塾の様子も、私の話も聞いて、原稿も読んでくださっての絵と配色です。まず感じたのは、つばめ塾の事業は、決して「あはは、わはは」と笑える楽しいものではないということでした。私は貧困家庭に育ち、なるべく「暗くならずに、明るくやろう!!」と運営してきました。講演会でよく、「小宮さんは幼少期に厳しい生活をしていたにも関わらず、明るく話されるので、良かったです。」と言われます。私が「こんなに悲惨な幼少期だった、だからみなさんの支援、寄付が必要なんですよ!!」と暗い声で言ったら、無料塾自体のイメージが暗いものになってしまいます。だから努めて明るく運営してきましたが、改めて考えると、塾生・卒業生の中には厳しい環境の子もいたと思うんですね。「なんでこんな遠い塾に来てるんだろう」「本当は近所の塾に友人と一緒に通いたかった」「今、親が離婚しそうでつらい」いろんな思いの子がいたにも関わらず、私が蓋をしてきた側面もあるのではないかと思いました。そう考えると、過去の塾生に対して、申し訳ない気持ちが湧きおこってきて、自然と涙が出てきました。ただ、そこで感傷的になっていても前には進みません。無料塾自体が厳しい面があるということを改めて私が認識して、世の中に広く訴えていこう!!と決意を新たにしました。つばめ塾は私が作ったということではなく、「無料塾は今の日本に必要なことなんだ」と自信を持って、「良い本ですからぜひ読んでください」と周りに勧めていこうと思えました。そういう意味で、この表紙は、最高の表紙であり、羽賀先生には感謝しかありません。
私がなぜこの本を書こうと思ったかというと、「ボランティア」を勧めたかったからです。ボランティアする生き方を伝えたかったのです。本屋に行けば、「お金儲け」の本がうず高く積まれています。その中で、「自分はちょっと損をしてもいいから、人のために尽くす」という生き方を多くの人に知ってもらう、そのために書きました。それこそが、今経済的に苦しい家庭の子どもたちにために一番役に立つからです。単に勉強を教えることはできます。しかし勉強ができるようになって、お金を稼げるようになって、「自分さえよければいい」という考えの青年に育ったら、何の意味もありません。それは、経済格差の再生産です。格差をつばめ塾が助長してどうするのでしょうか?そこに、「助け合いの精神」が入ることによって、格差が縮まります。個人でできることはそこまでです。でも、個人にできることに限界があると言って、何もしないで座して待つわけにはいきません。多くの人が「自分のできることから、今苦しんでいる人に尽くしていこう」と思ってもらうために書きました。
一人でも多くの方にお読み頂き、またお知り合いの方にお勧め頂ければと思います。
認定特定非営利活動法人八王子つばめ塾 事務局長兼理事長 小宮位之