みなさまのおかげ様で、八王子つばめ塾を任意団体として立ち上げてから、丸9年が過ぎました。今日から10年目に入ります。まずもって、今まで関わって下さったボランティア講師、応援して下さった支援者、寄付者のみなさま、そして真面目に勉強して卒業していった卒業生と現塾生にお礼を申し上げたいと思います。

毎年同じことを書きますが、設立した2012年9月1日、私以外誰も塾におりませんでした。9月9日に初めて中学2年生の男の子に授業を行いました。今では中高生30名、ボランティア講師45名がおります。

コロナ禍の関係で会場の受け入れ制限があり、塾生は2年前より減少しておりますが、設立した時より、大きく成長しているところもあります。それは奨学金事業とフードバンク機能です。
設立した日に、私は2つのことを思いました。「無料塾のネットワークを作りたい」「奨学金を出してあげたい」の2つでした。無料塾のネットワークは、コロナ禍の前までは力を入れていましたが、一定の成果をみせたので、もっと適した他の無料塾団体の方にお任せしております。私なんかより、もっとネットワークを広げられる方々です。
奨学金に関しては、あまりにも「夢物語」過ぎて、設立時に言葉に出すことさえ憚られました(笑)
一人のしがない会社員が立ち上げた無料塾団体が「奨学金」を出すなど、どこをどう考えたらそんな発想が出てくるのか?気でも狂ったのではないか?と思われると考え、2年間は誰にも言えませんでした。現に、2年間は寄付金が0円の団体でしたので、奨学金どころか、個人の持ち出しで運営していました。
しかし、今では多くの支援者、寄付者のみなさまのご寄付のお陰様で、中学生、高校生、大学生奨学金、教科書奨学金(高校・大学)、資格チャレンジ奨学金という5つの、年間250万円ほどの返済不要の奨学金制度を整えることができました。本当に夢を見ているようです。

先日、高校生奨学金の面談を行いました。月2000円の奨学金は、何に使いますか?と聞いたところ、「うちの生活が厳しいので、お母さんに渡して生活費に使ってもらいたい。」との答えが返ってきました。思わず涙が出そうになりました。「なんて親孝行な子なんだ」と感激しました。私の高校時代を思い出したからです。高校の3年間の我が家は本当に苦しい時で、家にお金がほとんどありませんでした。学費が払えなくて高校を辞めさせられそうになったので奨学金を借りました。
世の中には、「奨学金を生活費に使うとはけしからん」という方がいます。確かにそう思うのも否定はしませんが、つばめ塾の奨学金は違います。寄付者の方がつばめ塾のことを信頼してご寄付下さっているように、私も寄付者の方を信頼しています。そして、経済的に苦しいご家庭が生活費に使うことを決して咎めることなく、「厳しい家庭のために、よく奨学金を運用してくれた」と思って下さると信じています。

人間は「してもらったように育つ」と考えております。「ボランティア講師に勉強を教えてもらった。寄付者の方に奨学金を出してもらった。」という意識が、「自分もできることで、困っている人の力になっていこう!!」という意欲を育てると思っています。その種まきを、学習支援、奨学金事業を通してしている段階です。

10年目を迎えるにあたり、今年は、「進路を考えるヒントを塾生に渡していこう」と考えております。具体的には、高卒で就職した方や、大学、短大、専門学校に進学した卒業生に話を聞く機会を提供していこうと考えています。方法は、「講演会方式」や、ビデオ撮影し、簡単に編集をして、塾生への「YouTube限定公開」などです。家に余裕があって進学した方の体験談などは世の中にあふれています。しかし塾生がほしいのは、「経済的に苦しい状態からどうして進学したのか」とか、「高卒で就職して実際どうなのか」といった、本音の部分だと思っています。
今、卒業生に「どうして高卒で就職したかを後輩に伝えてくれないか?」「どうして大学に進学したのかをビデオカメラに語ってほしい」とあちこちに声をかけていますが、「塾の後輩のためになるなら、喜んで話しますよ」と言ってくれたり、「質問項目送ってください。しっかり考えておきます」など、好反応が多いです。本当に嬉しい限りです(^^♪9年間続けてきた成果が徐々に出てきたことを本当に実感しております。

しかしながら、ここまで充実したつばめ塾になれたのはすべて、ボランティア講師、寄付者・支援者のみなさま、そして多くの卒業生のおかげです(^^♪本当にありがとうございます。

また今日から、「何をしたら、経済的に苦しい家庭の子どもたちのためになるのか」を真剣に考えて、行動することをお誓いいたします。これからも八王子つばめ塾が、子どもたちのためになる「団体」であり続けられるよう、応援をよろしくお願い致します。

認定NPO法人八王子つばめ塾 理事長 小宮位之