9月1日をもって、八王子つばめ塾は発足6周年を迎えることができました。
今まで関わって下さったボランティア講師、寄付者の方、関係者のみなさまに深く感謝申し上げます。
そして、6年前の9月9日、講師私一人、生徒一人で始まった八王子つばめ塾は、現在教室7つ、生徒約90名、ボランティア講師70名の規模になりました。
また、八王子つばめ塾を見学に来てからスタートした無料塾は25団体を超えます。無料塾への視線も、6年前とは大きく変わりました。

ここ最近、感じていることを色々書いてみたいと思います。
①今年、八王子つばめ塾は、「高校生奨学金」を発足することができました。これは、高校生に月3千円~5千円の奨学金を支給し、参考書や交通費、受験費用などに少しでも充ててもらうことを目的に創設されました。今年は初年度なので、現塾生の高校3年生を対象に募集し、3名の応募がありました。来年2月以降は、高校全学年、かつ塾生以外にも、中学に在籍していた元塾生、元塾生以外にも募集します。

②うちの卒業生が講師として帰って来てくれたことが嬉しいですね。今3名が無料塾で講師をしてくれています。つばめ塾の理念に沿ってくれて嬉しい限りですが、卒業生はみんな、高校や社会で活躍してくれていると信じています。

③無料塾の広がりがさらに広がっています。6年前とは大きく状況が異なっています。ですから、各地にもっと民間有志型の無料塾が増えたらいいなと思っています。

④しかし、依然として経済的に苦しいご家庭が多いです。夏の食料支援やお米プロジェクト、奨学米などの呼びかけに多くのご家庭が応募されます。かつて我が家が相当に厳しい家庭に育ったのでよくわかります。

⑤私ごとですが、今年、東京薬科大学の非常勤講師となりました。11月から1か月間行われる一般教養科目で「社会保障と子どもの貧困」というテーマで講義を持ち、大学生に話す機会を頂きました。学生に訴えることで、この問題を個人の問題でなく、「社会みんなで考えていく問題なんだ」という意識を高めたいと思います。

⑥「困ったときはお互いさまである」と思っています。うちの父は小学校も中学校もまともに行かなかったので、字が書けない人でした。ですから、家業の芸能関係(スタッフ)しか仕事ができず、低い年収しかありませんでした。現在の風潮で言えば自己責任になるのかもしれません。当時でも「お金がないなら、交通整理のアルバイトでもして、金を稼げ」と近所の方から言われたこともありますが、歌舞伎界で非常に有名な裏方であった祖父の子として生まれ、プライドがあったのだと思います。どんなに貧乏しても決してドラマ制作の仕事以外はしませんでした。でも、一旦仕事が入れば朝早く現場に出かけ、何週間もスタジオに泊まり込み仕事をすることを私は知っていましたので、貧乏でも決して恨むことなんてありませんでした。父は、地元の少年野球チームのコーチを無給で25年も励んだ人でした。我が家にお金がないというのに、低学年の子供に絵本を買ってあげたり、練習後にアイスを買って配っていました。「お金をより多く稼ぐことが人間の価値ではない」とはっきり教えてくれました。野球を通して子どもの育成に全力を注ぐ父の後姿に影響を受け、つばめ塾を立ち上げたとも言えます。

つばめ塾のご家庭でも、「リストラに遭って厳しい」という事情を聞きます。現在は「お金がないなら、稼ぐためなら、どんな仕事でもして、どうしようもなくなったら周りに頼るのが筋道」という風潮を感じますが、私はそうは思いません。人間はお金のためだけに生きているのではありません。思うようにならないこと、思うようにならない過去に縛られて、結果、今が苦しい生活という方が沢山います。そう思うと、余裕がある人から歩み寄っていくべきだと常に思っているのです。9歳くらいから高校を卒業するまで、「どうしてうちはこんなに苦しいのに、誰も助けてくれないのか?」と疑問に思っていました。助けを求める側から「困ったときはお互いさま」とは言い出せないものです。だから今、学力に、時間に、仕事に、生活に、お金に、土地に少しでも余裕がある人から、「困ったときはお互いさまだから、一緒に頑張ろう」と声をかけ、行動するべきだと考えています。

貧困家庭に育った私が、結婚でき、待望の子どもも生まれ、生活が安定していた6年前、「この幸せな生活にとどまらず、今こそ立ち上がるべき」と決断し、つばめ塾を立ち上げ、その半年後に映像制作の正社員もやめ、全力を注いでいるのです。
これからも、学習支援を基盤として、奨学金、お米プロジェクトなど、実際に役に立つ支援に全力で取り組んでいきます。

以上思いつくままに書いてみました。
書いて思ったことは、どれもこれも、ボランティア講師、寄付者の人がいなければ、実現できないことばかりでした。設立当初は私一人がすべてやっていましたが、現在私ができることは、全体の1%ほどしかありません。ですので、これからもどうか、経済的に苦しいご家庭の子どもたちのために、応援をよろしくお願いいたします。

特定非営利活動法人八王子つばめ塾理事長 小宮位之